1.目的
本学は葛飾区内唯一の、「食と健康の専門家を養う管理栄養士養成大学」として、地域貢献活動を行っている。その一つに、平成23年から始めた食育SATシステムを活用した食事診断と栄養相談は、地域の方々を中心に食事のあり方の見直しのきっかけとして、毎年試行錯誤しながら継続している。
本事業の目的は、来場者の方々に、普段の食生活の問題点をご自身で発見し、改善目標をたて今後の健康増進に貢献することである。また、管理栄養士を目指す学生にとって、企画・運営を行いながら、直接地域の方々と接することで、これまで学んだ知識やコミュニケーション能力、接遇など新たな課題発見につながり、学生への教育効果も期待できると考える。
2.対象者
『聖栄葛飾祭』参加者で、本企画の参加に同意を得た者
3.実施者
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 助教 | 吉田真知子 |
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 教授 | 鈴木三枝 |
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 准教授 | 植松節子 |
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 教授 | 橋場浩子 |
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 准教授 | 風見公子 |
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 助手 | 平塚文乃、中村麻衣、佐久間俊幸、柴田隆一 |
東京聖栄大学 | 健康栄養学部 | 管理栄養学科 | 学生 | (2・3・4年次生) 53名 |
4.実施期間
平成29年11月11日(土)~12日(日)『聖栄葛飾祭』の2日間
5.実施場所
東京聖栄大学 1号館 143教室
東京都葛飾区西新小岩1-4-6
6.企画内容
本企画は食育SATシステムを使用した栄養計算と、学生による栄養相談を実施し、アンケート調査を行った。また、企画に携わった学生にもアンケートを実施し、企画運営に関する反省点などの把握や、管理栄養士を目指す学生への教育効果を検討する。
本企画で使用した食育SATシステムとは、実物大のフードモデルを選んでセンサーボックスに乗せるだけで瞬時に栄養価が計算できる、いわさきグループが開発した体験型の栄養教育システムである。なお、この企画は東京聖栄大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施し、アンケートの記入に際しては、来場者及び本学生にも資料6,資料7の説明書を用いて説明し、同意を得てからの記入とした。
参加者の流れは下記の通りである。
- 参加者が昨日食べた食事を属性、食事内容調査票(資料3)に記入する
- フードモデルから食べたものを学生と一緒に選ぶ(写真2)
- 選んだフードモデルから食育SATシステムを使用して栄養計算と栄養の過不足診断を行う(写真3)(資料4)
- 希望者にはコーチングシート(資料5)を活用した学生による栄養相談を実施する(写真4.写真5)
- 説明書(資料6)にて趣旨の説明を受け、アンケート(資料8)を記入する
*下記、資料はクリックで別窓にPDFを表示します
写真4.5.学生による栄養相談風景
7.結果報告
7-1.参加者のアンケート結果
① 参加人数とアンケート回収率
11日(土) | 12日(日) | 合計 | 回収率・回答率 | |
---|---|---|---|---|
企画参加者数 | 80名 | 102名 | 182名 | – |
アンケート回収枚数 | 78枚 | 100枚 | 178枚 | 回収率 97.8% |
アンケート有効回答数 | 73枚 | 97枚 | 170枚 | 有効回答率 93.4% |
以下、有効回答者のアンケート結果を報告する。
② 参加者の性別と年齢について
図1.参加者の性別
図2.参加者の年齢
図3.男女別年齢区分
③ 食育SAT診断に参加して
図4.食育SAT診断の評価
④ 栄養相談を受けましたか
図5.栄養相談の実施
⑤ 栄養相談の種類
⑥ 栄養相談で決めた行動目標
1. バランス
- 野菜を取り入れる
- 3食食べる
- 朝食を食べる
- 大豆製品を増やす
- 芋類、果物を食べる
- 脂質を控える
2 .ダイエット
- 野菜から食べる
- 主食を減らす
- お菓子は1日1回
- 夜遅い食事を控える
- 階段を使う
- ながら運動をする
3 .外食について
- サラダを食べる
- 1日に1食はバランス良く
4 .野菜不足
- 野菜を残さない
- 野菜料理を1品プラスする
- 野菜ジュースで補う
- 常備菜を作る
5 .減塩
- 漬物を減らす
- 味噌汁を半分にする
- 麺の汁を残す
- 味付けを薄くする
6 .アルコール
- お酒を控える
- 3食主食を食べる
7 .カルシウム不足
- 毎日牛乳を飲む
- 小魚を食べる
- 海藻を食べる
- 納豆を食べる
- 色々な食材からカルシウムを摂る
⑦ 栄養相談を行って
図7.栄養相談の満足度
⑧ 参加者の意見、感想
良かった点(一部抜粋)
- 学生の対応が丁寧だった
- 食生活を見直なおす必要性を感じた
- 良いシステムだった
- 家族にも薦めたい
- 説明がわかりやすかった
- 目標がたてられて良かった
- 学生の笑顔が良かった
- 栄養の大切さに気付いた
改善点
- 鉄不足の項目も欲しかった
感想(一部抜粋)
- 楽しかった
- 普段の食事について知れて良かった
- 思ったよりもエネルギーが低かった
- 学生さんこれからも頑張って
7-2.運営学生のアンケート結果
① 人数とアンケート回収率
運営学生数 | 53名 | |
アンケート回収枚数 | 47枚 | 回収率 88.7% |
アンケート有効回答数 | 47枚 | 有効回答率 100% |
② 運営学生の学年
図8.学年別参加人数
③ 企画運営参加回数
図9.企画参加回数
④ 企画運営に参加してどうでしたか
図10.企画に参加して
⑤ 管理栄養士を目指す学生企画としてどう思いますか
図11.管理栄養士学科企画として
⑥ 次回も機会があったら本企画に参加したいと思いますか
図12.次回の参加意欲
⑦ 企画・運営に参加して良かった点を教えて下さい
担当ブース別、良かった点
受付
- 先輩の動きを見れて勉強になった
- お客さんとたくさん話せた
- お客様への対応を臨機応変に行えた
- 一般の方と接することが少ないので、会話できてよかった
フードモデル
- 幅広い年代の人と関わることができた
- 地域の人と接することができた
- お客様とのコミュニケーションを取ることができた
- お客様と触れ合えたこと、周りを気にして目を配れた
- 対人スキルが磨かれた
- お客様に解りやすい言葉で話すことができた
- 実際の方々の食事情を知れた
- 色々な人が企画に興味があることがわかり面白かった
- お客様と相談しながらフードモデルの代用品を考えられた
- メンバーともコミュニケーションがとれた
- 先輩と触れ合えた
- 自分が栄養士になった時の体験ができた
パソコン
- お客様とのコミュニケーションの取り方を学べた
- お客様のリアルな食生活を知れた
- お客様の食を通してデータを見れたことはとても良い経験になった
- 自分もどういった食事が健康的なのかがわかった
- バランスよく食べることの難しさを再確認した
栄養相談
- 地域の人と接することができた
- 栄養相談を経験できた
- いろんな内容で栄養相談ができた
- お客様の色々な気持ちを聴くことができた
- 質問された点を勉強できる
- 多角的に物事を見ることができた
- 自分でも食生活の悪さに気づいた
- 自分に足りないところなど見つけることができた
- 栄養について勉強しようと考えるようになった
- 楽しく参加できた
⑧ 企画・運営に参加して困った点を教えて下さい
担当ブース別、困った点
受付
- 先輩が教えてくれたのでない
パソコン
- パソコン待ちの順番がわからなくなった
- フードモデル担当者と息が合わない時があった
- フードモデルにない食品の代用で分量の変更などに戸惑った
- フードモデルの貸し借りに時間がかかった
フードモデル
- フードモデルにない食品の代用に困った
- お客さんが多くなると、フードモデルが足りなくなった
- フードモデルの種類がもう少し欲しい
- フードモデルが重い
- パソコンで待つ時間があった
- 人数がもう少し欲しい
- 人と話すのが苦手である
- 効率よく動けなかった
栄養相談
- 勉強不足だった
- お客様の質問に答えるのが難しかった
- 足りない資料があった
- 対象者に合わせた進め方に悩んだ
- 特になし
⑨ 企画・運営にあたり、改善点があったら教えてください
改善点
受付
- 特になし
パソコン
- パソコンコーナーにトレーを置く机があるとよい
- 電卓を持っておく
- フードモデル担当者ともっと細かい打ち合わせが必要
- パソコンがもう1台あるとよい
栄養相談
- パソコンに時間がかかりもう少し動線をわかりやすくすると良い
- 不足している資料があった
- もう少し練習する時間があるとよい
フードモデル
- フードモデルが重い
- 菓子類、飲み物ののフードモデルを増やしてもらいたい
- きのこや野菜のフードモデルを増やしてほしい
- 魚介類の単品のフードモデルが欲しい
- お客様1人に必ず1名ずっとついていた方が良い
- 順番待ちをもっと整理した方がよい
- フードモデルを戻す人がいた方がよい
- フードモデルの置く位置を整理した方がよい
- フードモデル一覧表をもう少し早くもらっておくと予習ができる
8.総括
本企画は平成23年から開始し、試行錯誤を重ね今回が7回目の開催であった。聖栄葛飾祭(大学祭)内での企画であり、毎年200名近くの参加者があることから地域住民へも本企画を行っていることが浸透してきていることが考えられる。これは、本企画の目的の一つである、地域の方々を中心に食事のあり方の見直しのきっかけとして、微力ながら健康増進に貢献できていることが覗える。
参加者のアンケートからも、図4で示すように食育SAT 診断が96.5%の人から「有意義であった」との評価をいただき、図5で示すように74.1%人が栄養相談を受け、問題点に気づき目標設定を行うことができた。栄養相談においても図7 で示すように99.2%の人か
ら「有意義であった」との回答を得ることができた。感想からも「食生活を見直す必要性を感じた」や「家族にも薦めたい」などの食生活改善の意欲が覗え、本企画の食育SAT システムを利用した食事診断とコーチングを活用した栄養相談は効果的な方法であると考えられる。
本企画のもう一つの目的である学生への教育効果については、学生アンケートから管理栄養士を目指す学生達の企画として、図11 で示すように91.5%の学生から「勉強になる」との回答が得られた。自由記述からも「地域の人と接することができた」や「対人スキル
が磨かれた」「栄養相談を実際に体験することができた」などの意見だけでなく、日常の食生活を振り返り「自分でも食生活の悪さに気づいた」や「栄養について勉強しようと考えるようになった」などの新たな課題発見につながり、これからの学習に対する意欲や姿勢
を高める機会となったことが考えられる。また、企画運営に当たり、他学年との交流を通して、特に上級生の行動が下級生にとってモデリング効果をもたらしたと推察される。
今後も改善点を踏まえ地域の方々への健康づくりへの貢献と、管理栄養士を目指す学生への教育も含めた本企画を継続していきたいと考える。
写真5.1日目担当者集合写真
写真6.2日目担当者集合写真