日本の伝統料理について、成り立ちから伝承、食文化としての発展、ならびに各地域に根付いた伝統料理などのそれぞれの特徴を明らかにし、理解を深めるのが目的である。伝統料理や日本の食文化に興味を持っている高校生にわかりやすく解説し、身近に感じてもらうために東京聖栄大学において公開講座を行った。また、『聖栄葛飾祭』(大学祭)では、各県の伝統料理をテーマにポスターを制作して、一般の方にわかりやすく解説する機会を設け、日本の伝統料理を広く伝えた。
Ⅰ.夏の公開講座
高校生を対象とした公開講座「~日本の伝統料理 食文化の伝承と発展について~」と題して、令和元年8月28日(水)午前、午後の2部式で、以下の要領で開催した。
午前の部
日本の伝統料理 ~太巻き寿司・押し寿司を作ってみよう~
午後の部
発酵調味料・味噌 ~各地の味噌をくらべてみよう~
概要
午前の部では、日本の伝統料理である太巻き・稲荷寿司・かきたま汁の調理実習を行った。
参加者は各班3名で、各班2本ずつ太巻き寿司を巻いた。本学の学生も手伝いながらであったが、初めて巻きすを使った参加者もいて、具材をしっかりと巻くのに苦労していた。かきたま汁は汁が濁らないようにするのが難しかったようだ。参加者は協力して作ったお寿司とかきたま汁を美味しそうに試食していた。また、試食の際に日本の伝統料理である鰻の押し寿司と高野豆腐の煮物も少しずつ提供した。参加者からは、「具材の椎茸の煮付がおいしくて、たくさん食べました!」と教えてくれた。少人数だったので、班の中でもコミュニケーションが取れて楽しそうだった。(写真1~5)
午後の部では、発酵調味料である味噌について講義を行った。味噌歴史、製造法、分類、各地の代表的な味噌などを勉強し、高校生は味噌の違いを学ぶことができた。その後、講義を踏まえて、8種類の味噌の食べ比べを行った。(写真6~7)産地や材料、製造方法の違いにより味や香りの違いがあることが分かり、普段食べている味噌と違うものが多くあることが分かったと講評であった。
【午前の部】日本の伝統料理 ~太巻き寿司・押し寿司を作ってみよう~
写真1 講義の様子
写真2 調理デモンストレーション講義の様子
写真3 調理デモンストレーション講義の様子
写真4 調理の様子
写真5 調理完成
【午後の部】発酵調味料・味噌 ~各地の味噌をくらべてみよう~
写真6 8種類の味噌の食べ比べ
写真7 8種類の味噌の食べ比べ
Ⅱ.『聖栄葛飾祭』(大学祭)でのポスター展示
令和元年11月9日、10日の2日間にわたり、東京聖栄大学で開催した大学祭『聖栄葛飾祭』に日本フードスペシャリスト協会の補助を受けて参画し、ポスター展示を行った。
概要
来場者に日本の伝統料理と食文化について理解と興味を深めてもらうことを目的に、各県の伝統料理をテーマに本学の各研究室に所属する学生がテーマに沿ったポスターを制作して展示した。
また、ご当地メニューレシピとして、各県の代表的な料理のレシピをプリントし、来場者へ自由配付を行い、伝統料理に興味を持ってもらう取組も行った。
その他に、学生達が協力し「あなたが食べたい料理は?」と題して、県内の2つのレシピから食べたいと思う料理を選んで投票してもらうゲームや、伝統料理に関するクイズを、展示ポスターにヒントを散りばめて行うゲーム等を行い、多くの来客者に参加していただいた。展示を見ていただく来場者以外に、実際にクイズの参加者は120人と講評であった。来客者は自分の出身県のポスターを見て学生へ質問や、興味のあるメニューレシピのプリントを持って帰り、「作ってみるね」と声をかけてくれる参加者も見受けられた。(写真8~11)
『聖栄葛飾祭』(大学祭)でのポスター展示
写真8
写真9
写真10
写真11
Ⅲ.総括
日本の伝統料理について、8月の講座では伝統料理や日本の食文化に興味を持っている高校生に、簡単に歴史や文化を伝えるのではなく、本学で学べる調理技術や、科学的要素からみた「食」の魅力を伝える事で、日本の食文化に興味を持っていただけたと考える。また本学の学生も、高校生(一般の方)にわかりやすく食に関する知識や技術を伝える為にどのように取り組めばよいのか考えるきっかけになったと考える。
聖栄葛飾祭内で行った、各県の伝統料理に関するポスター展示・ご当地メニューレシピ作成には、学生達が文献検索を協力して行う事や、メニューレシピ作成の為に試行錯誤して料理を作り、試食して、「美味しい!美味しくない!」と言い合いながらも学び楽しんでいた。また、ご当地メニューレシピを作る際に、今回の実施責任者の研究室では、京都の白味噌のお雑煮を作成した。馴染みのない味に戸惑ってもいたが、日本の伝統食に触れ、何時になく盛り上がった議論がなされた。学生達のこのような姿は「食」が持つ興味や魅力だけでなく、過去から現在への食の伝承を垣間見ることができた。また、一般来場者にも食に関する情報発信を行う事ができたと考える。
フードスペシャリストを目指す学生たちは文献調査、試作をすることにより日本の食文化をアクティブに学習できたと考える。また、聖栄葛飾祭内でのポスター展示発表により、地域の人々にフードスペシャリストへの関心と認識を高めることもできたと考える。