「ママと子どもの楽しい食育」-よく噛んで味わって食べよう-
東京聖栄大学附属わたなべ幼稚園で平成21年11月12日、16日、20日の3日間「食育」の実践活動を行った。
対象者は年長組100名、年中組110名、年少組85名であった。なお、この事業には栄養教育研究室の渡辺講師、吉田助手の他に管理栄養学科3年生の学生14名が参加した。
テーマの設定
幼児期は「食を営む力」の育成に向け、その基礎を培うことが大切である。わたなべ幼稚園では、以前から給食を通して「食育」を推進している。幼児期は味覚や咀嚼能力が発達する時期であり、この時期に身につけたい習慣として「よく噛んで食べる」がある。これは、将来において食生活に大きく影響すること、家庭で実践しやすいことからこのテーマを選んだ。
何のために取り組むのか?実践を通して何を育てたいのか?
ねらい ― よく噛むことで
- 味覚を育てる
- ゆっくり食事を楽しむ
- よく噛む習慣は、肥満、虫歯予防など健康な体を作るための基本である
- よく噛んで味わうことは、素材のうま味を知り薄味に慣れる
- 野菜を食べる習慣をつける
幼児の実態を観察
「食育」にあたって、芋ほりに参加し園児とふれあい各年齢の発達や言葉、食事の様子(食べ方、噛む様子)を観察した。
芋ほりを通しての学習
一緒に食事(お弁当)
食べ方・噛み方・好きな食べ物・食べる速さなど学習
年齢別ペープサートのテーマと内容 ―指導内容―
各年齢の発達行動にあわせて共通のキャラクターとサブテーマを決めた。
クラス | 人数 | テーマ |
---|---|---|
年長組 | 3クラス 100名 | アンパンマンとよく噛んで食べよう―けんちゃんの巻― |
年中組 | 3クラス 110名 | アンパンマンとよく噛んで食べようー早食い太郎君の巻― |
年少組 | 3クラス 85名 | アンパンマンとの5つの『た』の約束 |
年長組
- よく噛んで食べるとおなかニコニコ
- よく噛んで食べると虫歯になりにくい
- よく噛んで食べると食べものがおいしい
年中組「4つの約束」
- 落ち着いて食べよう
- よく噛んで、飲み込んでから次のひとくち
- 飲み込む前にあと5回噛もう
- たくさん噛めばご飯もおいしい
年少組「5つの『た』の約束」
- たべる時間を決めよう
- たくさん噛もう
- たち上がらないで食べよう
- たのしく食べよう
- たべきろう
幼稚園の先生との打合せ ―幼稚園との連携―
幼児教育の立場から、練習用ビデオを見て頂き、動作、幼児にわかる話し方、声のトーン、人形の動かし方について学ぶ。
ペープサートによる食育と園児の様子
園児は、とても興味を示し楽しんでいた。
指導の効果
給食時間にクラスの先生から園児に再度指導。問いかけに楽しそうに答えていた。
家庭で楽しく実践できるように、「ぬりえ」と「保護者へのおたより」を配布した。今回食育にあたって、園児に (1)楽しく教える (2)楽しく学ぶ (3)楽しく実践できる を考えて行った。
幼稚園の先生・園児・ご父兄、大学生・教員の協力で実現できました。
スタッフ
学年ごとの感想(東京聖栄大学学生)
年少組
簡潔に簡単な言葉でわかりやすくまとめて伝えるという事の大切さと難しさを学ぶ事が出来ました!ありがとうございました!!
<3NA 川田 健太>
年中組
年中さんは、とにかく元気いっぱいで落ち着かせるのが大変でした。でも、発表の時はみんな真剣に聞いて、クイズに積極的に答えてくれていて、とても熱心な様子だったので、嬉しかったし、やってよかったと思いました。
<3NA 石原 みどり>
講義だけではわからないことを勉強できました。本来の目的を忘れて園児との触れ合いを楽しんでしまいました。
<3NB 佐藤 省悟>
年長組
年長さんは、年中・年少さんに比べ少し大人びていたと思いました。好きなキャラクターも違っていましたし、発言もしっかりしていました。そこで、発表の際には園児にわかりやすくはもちろんのこと、具体的に説明をしていろいろなことを知ってもらおうと思って発表内容を考えました。発表の時はしっかりと聞いてすぐに内容を理解して、質問にも積極的に答えてくれました。私達は、食べ物によって噛む回数が違うということをクイズ形式で行いました。発表後の給食時間では、教えたことを守ってみんな噛む回数を数えながら食べていたのを見て、とてもうれしかった。
今回参加して実際に発表するにあたっては、ペープサートの大きさを考えたり言葉を選んだり、思っていた以上に大変でした。でも、発表した後の園児の様子を見て、やることが出来てよかったと思いました。これからの実習や就職活動にとっても、とても良い経験になりました。
<3NA 永島 歩美>
食育指導の感想(幼稚園側)
年長組担任
「よく噛んで食べよう」のテーマで、アンパンマンのペープサートを使って演じていただけたので、子どもたちはとても興味を持って観ていました。
ペープサートを行っている中で、大きな声で判りやすくお話をして、なぜよく噛んで食べることが大切なのか、一回一回確認をしながら劇を進めていらしたので、子どもたちにもよく伝わっていました。
その日の給食では、食べる前に「これは○○回噛んで食べるんだよ」と子ども同士の会話の中に頻繁に出ていました。
子どもたちだけではなく、担任もよく噛んで食べることの大切さを改めて確認させていただきました。有り難うございました。
年中組担任
普段の保育の中で、食前の挨拶をする時には「たくさん噛んで食べましょう」と言葉掛けていますが、ペープサートを使って、子どもたちの大好きなキャラクター「アンパンマン登場」でとても集中して楽しそうに観ていました。
保育室に戻り、給食中に友だち同士で「ゆっくり食べるんだよ」「飲み込む前に5回噛むんだよ」と確認しあっている姿や「先生、100回噛んだよ!」と自慢げに話す子どももおりました。
今回の食育指導を受けて、とてもよい経験となりました。
私自身も、普段、忙しいのを理由に急いで食べてしまうことが多いので、噛むことの大切さを再確認するよい機会となりました。
また、ペープサートの大きさ、演じ方、話し方などとても上手で、私にもよい勉強となりました。
年少組担任
子どもたちはアンパンマン登場ですっかりお話の中に溶け込んでペープサートに見入っていました。保育室に戻ってから5つの約束を確認したところ、結構覚えている子が多くて驚きました。
翌日、「家で塗り絵をしてママにお話したよ!」と塗り絵を持ってきてくれた子どもや、「次は何をやってくれるの?どんなおはなしかな?」と期待を寄せていました。
月日が経った今でも時々思い出す子どもがいて「よく噛んで食べないとバイキンマンが来るよ!」などといっています。
劇も判りやすく出演してくださった学生の方々もとてもじょうずでした。また、機会がありましたら見せてください。有り難うございました。
年少組はアンパンマンのお話が大好きです。インパクトのあるアンパンマンのペープサートを喜んで観ていました。
五つの「た」を使った約束も覚えやすかったのでとてもよかったです。その中で「食べきろう」の言葉が少し難しかったようで、「全部食べようね」など言葉掛けをしたら分かったようです。
クラスでも給食前にもう一度五つの「た」を確認して給食を食べました。
最近では子どもたちも給食の完食が出来るようになり、食への関心が、遊びのエネルギーになっているのかと思われるほど、活発に遊ぶ姿が見られます。有り難うございました。
後援
「ママと子どもの楽しい食育」は、社団法人全国栄養士養成施設協会の後援で実施しました。
年少さんは幼稚園児の中でも知っている言葉が少なく、難しい言葉も使えないので、「原稿はこれでわかるかな?」「ペープサートはこれで大丈夫かな?」など、本番までとにかく不安でいっぱいでした。
でも、本番でワクワクしながら会場に入ってくる園児を見て、とてもヤル気が起きました。発表中はとても真剣に見てくれ、投げかけにも反応してくれました。発表後に教えた約束ごとを口にし、ぬりえを大事そうに持ち帰ってくれたことが本当に嬉しく、やってよかったと思いました。
また、事前に芋掘りに同行させていただいて園児と交流が持てたので、緊張することなく出来ました。今回の実習はとても短い期間でしたが、本当にいい経験になりました。
またこういう機会があったら参加したいです。
<3NA 坂上 志津加>